追悼ーモンセ・ワトキンス

(1955年 バルセロナ生まれ ー 2000年鎌倉没)

上智大学エレナ・ガジェゴ

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モンセ・ワトキンスが来日して30年が過ぎた。かねてから書で読み、学びたいと思っていた日本の伝統文化への好奇心と情熱が、彼女を日本に関する研究に没頭させ、そのことに彼女は満足したのである。
数年後には、モンセは日本文化に溶け込んでいた。伝統的な作務衣と下駄に身を包み、彼女が翻訳に傾倒した明治期の作家立ちと同じような伝統的な木造の家に住み、その家のある鎌倉の歴史的な町並みを闊歩していた。

彼女は日本語からの、すなわち英語や他の言語を介さない、直接の文学翻訳の先駆者だった。スペインでは、日本文学についてはほとんど何も知られていなかった時代に、翻訳者であり、出版者でもあった。すなわち「スペインの出版社の陰気な沈黙に疲れ、日本で自分の出版者を作り、スペイン語で日本文学を広めるという夢を実現しようとした」のである。こうして、日本の出版社現代企画室内部に、「ルナ・ブックス」選集が誕生した。

1994年から、彼女の死の2000年まで、モンセ・ワトキンスは日本の近代文学から25冊を刊行した。夏目漱石、芥川龍之介、島崎藤村、森鴎外、太宰治、武者小路実篤、小泉八雲、とりわけ、彼女の感性と合致し、深く愛した宮澤賢治など、それらの翻訳の大半は、スペイン語初訳になるものだった。

近代文学翻訳の他、彼女は、自身の書いた短編や、日系移民の問題についての研究も出版した。これは、90年代に日本にやってきた日系移民の子孫の二世三世の人々のことである。この点についても彼女は研究の先駆者だった。この予測を超えた問題にどう対処するべきか誰もわからない時代に、モンセ・ワトキンスの研究は、私たちの良心に警告を発し、無名の幾多の移民の人々に声と顔を与え、彼らの直面している問題を詳細に分析したのだった。

45歳の時、夏目漱石の草枕の翻訳途上にして、モンセはこの世を去った。彼女の愛した宮澤賢治と同じく、若くしての、人生の使命を全うした満足に、唇に笑みを浮かべての死だった。

私にとって人生で与えられた最良の贈り物は、ルナ・ブックスで、モンセ・ワトキンスと協力できたことだ。共に宮澤賢治を翻訳し、研究し、彼女の日本文学や日本文化への愛を分かち合った。
モンセの夢を実現させてくれたすべての人々、とりわけ太田昌国氏と唐沢秀子氏、現代企画室、そして、彼女の作品の出版に協力してくださった諸機関や皆様に感謝する。

2012年3月、井戸光子と私エレナ・ガジェゴは、すべての人がモンセ・ワトキンスの形見に接することができるように、ルナ・ブックスで出版されたすべての書籍のすべてのコレクション2部をセルバンテス協会に寄贈した。

ありがとうモンセ、あなたの寛容さとあなたのやってきたことに感謝する。

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